Why Juice?のジュースは、たくさんの支えてくれる人のうえに成り立っています。
その多くは、野菜・果実の生産者さんたち。「できるだけ、農薬不使用・減農薬・化学肥料不使用などの栽培方法で育てられ、放射能検査を実施した旬の食材を使ったジュースを作りたい」と考えるWhy Juice ?の気持ちを汲んでくれています。
なかには、野菜や果実のパルプ(圧縮した果皮や繊維のこと)を堆肥に還元するためのアドバイスをくれる方も。
その方が、四井(よつい) 真治さん。
四井さんはいろんな顔を持っている方。仕事の顔は“土壌管理コンサルタント” 、“パーマカルチャーデザイナー” であり、代表として「ソイルデザイン」を主催。地球本来のしくみに沿った暮らしを考えることで人の暮らしが環境を壊すのではなく「循環」や生きものの「多様性」を生み出し場を育て暮らしをより豊かにする住空間や社会の仕組み、暮らしの道具などをデザインしています。
私生活では、パーマカルチャーを実践しながら、山梨の八ヶ岳の麓にある森の中に移住して、ご家族4人で暮らしています。『大草原の小さな家』でいうとチャールズのような生命力があって、道具でも食べ物でも1からなんでも作れる頼れるお父さん。
私たちWhy Juice?にとっては、“これはどうしたらいいのかな?” と迷ったときに的確な助言をくれる頼れるパートナーなのです。
現在、Why Juice ?と四井さんがともに取り組んでいることに「土作り」があります。代官山にある店舗でジュースを作るために、私たちが野菜・果実を絞って生ごみとして出てくるパルプが、だいたい1日10~20 キロ。暑い日も寒い日も生産者のみなさんががんばって育ててくれた野菜。そのままゴミにせず肥料として生まれ変われたらいいな、と考えていたとき、「うちで土に戻して堆肥にしましょう」と提案してくれたのが四井さんでした。
実は、健康でおいしい野菜を作るうえで一番大事なことが、植物の種類でもなく農薬の使用・不使用ではなく、育つ環境である「土」の質とか。化学肥料ではなく、自然由来の肥料(質のいい生ごみや木・葉のチップ)など栄養を多く含み発酵してきた土は、植物を健康的に育ててくれます。
ジュースを作る過程で生じたパルプを山梨の四井さんの堆肥場に送り、堆肥となり、ふたたび命を育む豊かな土壌になる、というふうに「循環」していくのです。
この「循環」こそが、四井さんが指導・提案しているパーマカルチャーの本質。(パーマカルチャーは、1970 年代にオーストラリアのタスマニア島で暮らしていたデビッド・ホルムグレンとビル・モリソンによって確立された、人間にとって恒久的持続可能な環境を作り出すためのデザイン体系のこと。パーマネント(永久)、アグリカルチャー(農業)またはカルチャー(文化)を合わせた造語。その土地の持つ風土や文化に沿って、人を含めた生態系を考え、暮らしを設計すること)
四井さんは、この自然の摂理にのっとった循環する仕組みを自宅でも実践。畑の水やりは、雨水を貯めたタンクから。家庭から出た生ゴミやWhy Juice ?のパルプ、木工の工作で生じるおが屑、落ち葉、飼っている山羊や鶏、四井家の家族の排泄物といったものから生まれる堆肥。四井さんはそれを自分の畑の肥料とし、野菜や小麦を育てています。
また、キッチンで使った水は、下水道ではなくバイオジオフィルターという水路へ流し、砂利や植物のフィルターを通すことによって浄化。その水は小さな池となり、睡蓮が咲いたりおたまじゃくしなど昆虫が生きる場に。
四井さん宅には使いやすいキッチンがあって、庭には石を積んだ大きなピザ釜まで。[マル神農園]で収穫させてもらったばかりの野菜を手土産に、ピザを作りながらあれこれトーク。(余談ですが、四井さんが養蜂して作ったというはちみつをいただき、ピザにかけたらおいしかった!)
消費という一方通行の暮らし方ではなく、さまざまな要素が結びついて、ぐるぐると大きな円を描いて無理なく持続していくライフスタイルを私たちWhy Juice?に教えてくれるのです。
不定期で自宅を開放してパーマカルチャーについての講座や「自家製味噌を作る」「かまど造り」などワークショップを行っています。興味のある方は是非予約を。
四井 真治さん
ソイルデザイン代表。信州大学農学部森林科学科にて農学研究科修士課程修了し緑化工学を学び、緑化会社にて営業・研究職に従事。その後、長野での農業経営、有機肥料会社勤務を経て2001年に独立。土壌管理コンサルタント、パーマカルチャーデザインを主業務とした「ソイルデザイン」を立ち上げ、多くのプロジェクトに携わる。
2007年に山梨県北杜市へ移住。八ヶ岳南麓の雑木林にあった一軒家を開墾・増改築し、妻、2人の息子とともにん“人が暮らすことでその場の自然環境・生態系がより豊かになる”パーマカルチャーデザインを自ら実践
http://soildesign.jp
取材・文:髙橋紡